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スピンオフがシンデレラだったので
本編は白雪で(*´`)←











「白雪姫ってばかですよね」



フォークに刺した林檎をシャリシャリと音を発てて食す。
甘い汁が口の中で溶け出した。おいしい。
やっぱり林檎は兎に限る。味が変わるわけじゃあないんだけど。



「……それ差し入れだって言ってなかったっけ」
「だって和泉さんがなかなか食べないからー。変色しちゃったら兎が報われないですよ」
「………」
「ちょっと休憩して食べたらどうですか?」



ほら。とフォークを渡すと受け取ってくれた。
和泉さんは書くことに熱中してしまうと平気で食事を抜かすから、困る。



ふたりで黙々と林檎を食べていると、和泉さんが言った。



「白雪姫がなんだって?」
「え?」
「言ってただろさっき」
「あぁ。だから、白雪姫って、ばかだなぁって」
「………なんで怪しい老婆から林檎をもらうんだ。ばかだな。…って意味?」
「や、そういう意味じゃないんですけど」
「違うのか」
「わたし、白雪姫は知ってたと思うんです。林檎には毒があるって」
「え?」



見るからに怪しい老婆から手渡された林檎がまともなものでないと気付けないほど、白雪姫が鈍感だったとは思えない。

その林檎には毒がある。と、気づいていたとして。



「じゃあなんで食べたんだ」
「なんででしょうねぇ」
「きみにはわかる、みたいなかんじだな」
「憶測ですけど」
「そんなのわかってる。それで?」
「え?」
「答えはなんなんだ」



視線を最後の一個の林檎に落して、
そこにサクリとフォークを突き刺す。
チェックメイトのときのような優越感。
(チェスとかしたことないけど)



「王子様に会いたかったんじゃないかなって」















林檎の甘さが体内に溶け込んだ頃、
和泉さんは口を開いた。



「計算高い白雪姫だな」



わたしもそう思う。



物語の展開を知っているヒロインなんて、とか、
そういうとこ突っつかれるとこの憶測はもう何でもないけど。
でも和泉さんは壊さなかった。
野暮なことしないで、その計算高い白雪姫を受け入れたのだ。
なんだか嬉しかった。

最後の一こあげればよかった。




「結局わたしのほうがいっぱい食べてしまいました」
「ほんとだ」
「この林檎おいしかったですねぇ」
「くち、ついてるぞ」
「は?」
「林檎の」
「………」



最後の一こは、あげなくてよかったのかもしれない。








今こんなふうにくちびるに触れるのが、
もしかして指じゃなかったとしたら。

そんなことになると知っていれば、
わたしだって毒りんごをかじるんだろう。




ばかな白雪姫。
でもよくわかります。












(結局はわたしもばかなんだよなぁ。)
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一瞬
ドキッとした!
和泉氏は普通にやりそうだなぁ…
まぁやさんの上総は計算高そうでかわゆす(´∀`)wwww
チコ 2009/01/26(Mon)08:17:14 編集
すてきな親指
無意識にやる和泉さんにきゅん(´ω`*)笑

やっぱり違う人間は書いたら違う人格になるよね…笑
まぁや 2009/01/27(Tue)21:16:56 編集
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