本の虫と文字の虫とその周辺 (初めての方はカテゴリより、「はじめに」と「登場人物紹介」から)
「ねぇ」
「なんだ?」
「ほら」
「………なんだよこれ」
「まぁ聞いてよ」
「ここにちょうお高いチョコレートがあるわ。高級チョコ専門店の限定品。並んだのよ。しかもあなたの好きなウイスキーボンボン」
「で。こっちが手作りチョコ。でもただの手作りじゃないわ。あたしの手作り。めったに手作りとかしないあたしの手作り」
見栄えだけなら決定的なチョコを並べる。
「さぁどっち」
「……………なぁ」
「なによ」
「俺はこのかんじ前にもあったと思うんだが」
「なにそれいつの話?気の所為よ。ほら、選んで?」
「……ここは手作り選ぶとこだってのはわかるんだが。正直俺ウイスキーボンボンが……」
「ん?」
「いやな、ウイスキーボンボン……」
「とればいいじゃない。でも、そしたら手作りのはなしね」
「………」
「どっちなのよ」
「お前ずるいよな」
「そうね」
「ほんとずるいよ」
手作りチョコをつまむ播磨と、
その横で美味しそうにウイスキーボンボンを頬張る伊予。
ビタースイートハニー
(手作りチョコはなぜかしょっぱかった。)
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「……それってデート?」
「……そう思う?」
「だって二人で映画行ったんでしょ」
「んー、でも、なんていうか。ねぇ?」
「いや、ねぇって言われても」
「いまいちムードがなかったのよ。隣で寝てるし」
「まぁ、そんな人ですから」
美作さんはわかってるわよ、と言ってため息をついた。
「あ」
「え?」
「あ、いや……」
「なによ」
その姿に俺は少し、昔のことを思い出した。
「……そう思う?」
「だって二人で映画行ったんでしょ」
「んー、でも、なんていうか。ねぇ?」
「いや、ねぇって言われても」
「いまいちムードがなかったのよ。隣で寝てるし」
「まぁ、そんな人ですから」
美作さんはわかってるわよ、と言ってため息をついた。
「あ」
「え?」
「あ、いや……」
「なによ」
その姿に俺は少し、昔のことを思い出した。
低レベルなシーソーゲーム
遅ればせながら七夕!
7月8日
テスト最終日。あたしがちょっと嘘をついた日。
「あー!湿気多すぎる」
テストの終わった教室で上総が髪を結い直す。
対して崩れてもないのに。
「ここはねてるもん」
「…確かに」
普段の上総なら気にしない程度。じゃあなんで気にするかって?それはテスト最終日だからです。放課後に行くところと言えば一つしかない。
「美濃ー、ここ押さえてて」
「…ごめん、今からバイトで急ぐから」
「あ、そっか」
そのあとばいばーいと言った上総の姿を思い出す。思い出しながら、いつもよりゆっくり自転車を漕いだ。バイトまで時間なんて山ほどある。ゆっくり漕ぐのは汗をかいたら困るから。
昨日は七夕だった。バイト先の子どものような大人はまたバカみたいに短冊を吊るしまくってるだろうか。それがあまりにも簡単に想像出来て、少し笑った。それならばあたしの今年の願い事は、『誰かさんが七夕なんてしてませんように』。後片付けとかめんどくさいし。
もう7日じゃないけど、効力あるのかな。微妙そうな予感。それでも効かないんだろうなあ。七夕みたいなナイス行事を見過ごすなんてあり得ないでしょ。
「……あり得た」
「あー、久しぶり」
なんで。
悠々と紅茶を飲む子ども大人。あり得ないでしょ、いやいや、あり得るんだった。
「テストどうだった?」
「…まあまあです」
美濃ちゃん賢そうだもんなあ、とか言ってあたしに紅茶を注ごうとする。ちょっと待って、
「…昨日、」
「七夕?」
「何もしなかったんですか」
「うん」
叶えてくれちゃった。別に良かったのに。ていうか願い事って叶うんだ。
「だってさー、よく考えて?」
「はあ」
「織姫も彦星も自分らのことで必死だって」
「…」
「悲劇のカップルみたいな扱いを受けてるけど、ただの自己中と思わない?」
「…ひねくれてませんか」
「だってさ仕事サボったのはあいつら自身で、それで離ればなれにされるのとか自業自得じゃん」
「まあ」
「そんなやつらが年一で会う日に他人に構ってられると思う?俺なら無理絶対嫌だ」
「…」
あたしも嫌だ。二週間でも嫌だったのに。ていうかもう実行済みとか、どんだけー。あ、ちょっとネタが古いか。つーかごめん上総。多分織姫と彦星の陰謀だから。
そう、他人に嫉妬する奴らはあたしの叶えてほしくない、冗談の願い事を叶えやがった。性悪すぎる。
「そういうことだよ美濃くん」
「はあ」
「僕がそんな子どもじみた行事に参加するとでも?」
「ばっちり思ってました」
「…ああそう」
人のことなんて構ってられないのは当たり前か。織姫と彦星は節度を考えて仲良くするように!
あたしもそうするから。
*
二週間ぶりの掃除。
ゴミ箱の袋を替えようと思ったら。
「…なんですかこの笹と折り紙は」
「……見つかった?」
「誰ですかこんな子どもじみた行事に参加するのは」
「こういうのは気持ちの問題だって!」
はあ、と息を吐いてゴミ箱の中を見返せば見覚えのある字で『過去の締め切り前』とかかれた短冊が見えた。
織姫と彦星、性悪とか言ってごめんなさい。
7月8日
テスト最終日。あたしがちょっと嘘をついた日。
「あー!湿気多すぎる」
テストの終わった教室で上総が髪を結い直す。
対して崩れてもないのに。
「ここはねてるもん」
「…確かに」
普段の上総なら気にしない程度。じゃあなんで気にするかって?それはテスト最終日だからです。放課後に行くところと言えば一つしかない。
「美濃ー、ここ押さえてて」
「…ごめん、今からバイトで急ぐから」
「あ、そっか」
そのあとばいばーいと言った上総の姿を思い出す。思い出しながら、いつもよりゆっくり自転車を漕いだ。バイトまで時間なんて山ほどある。ゆっくり漕ぐのは汗をかいたら困るから。
昨日は七夕だった。バイト先の子どものような大人はまたバカみたいに短冊を吊るしまくってるだろうか。それがあまりにも簡単に想像出来て、少し笑った。それならばあたしの今年の願い事は、『誰かさんが七夕なんてしてませんように』。後片付けとかめんどくさいし。
もう7日じゃないけど、効力あるのかな。微妙そうな予感。それでも効かないんだろうなあ。七夕みたいなナイス行事を見過ごすなんてあり得ないでしょ。
「……あり得た」
「あー、久しぶり」
なんで。
悠々と紅茶を飲む子ども大人。あり得ないでしょ、いやいや、あり得るんだった。
「テストどうだった?」
「…まあまあです」
美濃ちゃん賢そうだもんなあ、とか言ってあたしに紅茶を注ごうとする。ちょっと待って、
「…昨日、」
「七夕?」
「何もしなかったんですか」
「うん」
叶えてくれちゃった。別に良かったのに。ていうか願い事って叶うんだ。
「だってさー、よく考えて?」
「はあ」
「織姫も彦星も自分らのことで必死だって」
「…」
「悲劇のカップルみたいな扱いを受けてるけど、ただの自己中と思わない?」
「…ひねくれてませんか」
「だってさ仕事サボったのはあいつら自身で、それで離ればなれにされるのとか自業自得じゃん」
「まあ」
「そんなやつらが年一で会う日に他人に構ってられると思う?俺なら無理絶対嫌だ」
「…」
あたしも嫌だ。二週間でも嫌だったのに。ていうかもう実行済みとか、どんだけー。あ、ちょっとネタが古いか。つーかごめん上総。多分織姫と彦星の陰謀だから。
そう、他人に嫉妬する奴らはあたしの叶えてほしくない、冗談の願い事を叶えやがった。性悪すぎる。
「そういうことだよ美濃くん」
「はあ」
「僕がそんな子どもじみた行事に参加するとでも?」
「ばっちり思ってました」
「…ああそう」
人のことなんて構ってられないのは当たり前か。織姫と彦星は節度を考えて仲良くするように!
あたしもそうするから。
*
二週間ぶりの掃除。
ゴミ箱の袋を替えようと思ったら。
「…なんですかこの笹と折り紙は」
「……見つかった?」
「誰ですかこんな子どもじみた行事に参加するのは」
「こういうのは気持ちの問題だって!」
はあ、と息を吐いてゴミ箱の中を見返せば見覚えのある字で『過去の締め切り前』とかかれた短冊が見えた。
織姫と彦星、性悪とか言ってごめんなさい。
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