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本の虫と文字の虫とその周辺                                                            (初めての方はカテゴリより、「はじめに」と「登場人物紹介」から)
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最近。

和泉さんといると、きんちょうする。


自分の心臓の音になんだかやりきれなくなって
くっついていた背中を離れた。



「ん?」



和泉さんが振り返ったのでどんな顔をしていいのかわからず、
なんでもないですと返してまた背中に戻ろうかと思ったけどそれもできなくて。

背中にムズ痒さを感じながらコーヒーを淹れようとキッチンに向かう。









最近。

和泉さんといると、きんちょうする。










「(なんでだろう)」



自分は人見知りをする方ではないし、そもそも相手が和泉さんなんだから
今更それはない。ないはずなのになんで。なんでこんなに。こんなにギクシャクするんだか。自分がわからない。

コーヒーにミルクを注ぐと、黒に白がゆっくり、ゆっくりと混ざっていった。じれったくなってスプーンでかき混ぜる。この動作はせっかちだと思う。せっかちだなわたし。

混ざりきったくるくる回るコーヒーの表面から
そっとスプーンをぬいて、書斎まで。

せっかちなわたしは正解に辿りつけるのだろうか。
混ざりきって黒とも白ともつかなくなったらもうわからない。




「和泉さん、コーヒーどうぞ」
「あぁ、どーも」



お礼を言いながらも執筆中の原稿から目を離せない和泉さん。
そっと手元にコーヒーを置くと指先が触れる。



「、」



そんなベタな。

パッと顔を上げると視線がぶつかった。途端、心臓がきゅっと小さくなって息が上手に吸えなくなった。
和泉さんは何事もなく原稿に戻る。



あぁ、きんちょうした。











Q,それはなぜですか?










「(なんでかなぁ)」



また出会った真剣な横顔。
やはり好きな造形。
好きって言うよりは好ましいのほうがしっくりくるかも。
好ましい。
背中の次に。

好ましいのは、なんで?



「(あぁそうか!)」






A,





「……わたし、わかりました」
「ん?」
「和泉さんがかっこいいからです!」





ぶっと和泉さんはなぜか咳込みだして原稿が汚れそうになった。
わたしは慌てて原稿を守る。





「……なんだって?」
「和泉さんかっこいい!」
「いや、やめてくれ」
「これで解決しました」
「何が」
「簡単なことだったんですねー」
「……俺はきみがわからないよ」






和泉さんが呆れながら机に置いたコーヒーは、
混ざりきって黒とも白ともつかない。






「そっかぁー」





せっかちが無闇に突っこんだスプーンは正解ながら不正解を出した。








キューアンドエー


(なぜ格好よく見えるかが問題なんだと早く気づいて)
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