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本の虫と文字の虫とその周辺                                                            (初めての方はカテゴリより、「はじめに」と「登場人物紹介」から)
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気づいたときには、もう終わり。

さぁ、大変だ。




時すでに遅し。

「・・・しまった」

気づいたときには、全ての本は『本の虫』に食された後だった。





【彼女の片鱗】





俺は本棚の前で立ち尽くしていた。
今日も来るであろう彼女に渡す本がない、

「ありえるのか・・・」

正直、この本棚の本を読みきるのは大量の時間が必要だろう。(俺が昔から集めた本もある)
もちろん、本棚は1つだけじゃない。
多種多様な本を揃えていたのだが・・・・
それを彼女はペロリとたいらげた。

まぁ、毎日来ているし、一日に約二冊のペース、土日は三、四冊は軽く読んでいたが・・・

本の虫、侮りがたし。

「さて、どうしたものか」

もう貸す本がない。
現実問題、あと数分で彼女の来る時間が迫ってきている。
本屋へ駆け込むこともできない。

「・・・無いこともないのだが・・・」

はたして、これを渡してしまっていいのだろうか。


「何悩んでるんですか?」

きた。
いつもいいタイミングで登場する彼女。

「君に貸す本がなくなった」
「あらら、読みきってしまいましたか」

何故他人事・・・。

「ん?和泉さん、それはなんですか?」
「あー・・・君に貸してない本」
「あるんじゃないですか!それでいいですよ!」
「いや、これは・・・」

と、俺が停止する暇もなく彼女は俺の手から本を取り上げた。




「・・・・・・・和泉さん、コレは・・・」
「・・・外国の本」
「じゃあ」
「全て英語」

彼女はうーんと悩みだした。
だから止めたのに。

あの本は、俺が色んな本を読み漁っていたときに備前が俺にくれたもの。
なにやら知り合いからもらったと言って、渡してきた一冊。
もちろん、俺は読んだ(報告した時の備前の悔しそうな顔が、今でも忘れられない)

「和泉さん、これ面白かったですか?」
「まぁ、ほどほどに」
「じゃ、読みます」
「え、」
「辞書貸してください」

彼女はいつもの指定席に向かって歩いていく。
なんだって?
読むって?

「君は英語読めるのか?」
「辞書があればなんとか」
「・・・英語強いんだな」
「いえ、英語は苦手です」
「?読めるのに?」
「読めると話せるはちがうんですよ」

つまり、解読はできるが使えないということか?

彼女は俺から辞書を受け取り指定席に座った。

「まぁ、英版の本なら何冊か読んだことがありますからね!」
「・・・さすが本の虫」


本好きは言語の壁をも越えた。
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