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PCと戦っているあいだに、桜は散ってしまったが・・・
せっかくなので、載せてみたよ!!

下総と和泉さんのお話。







廻り廻る、時は進む。

またこの季節がやってきた
桃色の花吹雪
君と出会ったあの桜の木は、ただの切り株。

君は今どこにいる?



吹雪に霞む】




書いている小説が行き詰まり、気分を紛らわすために外にでた。
彼女と歩いた道を通り、途中で右折。
そのまま進むと段々視界に桃色が入り込む。
着いた場所は公園。

広くも小さくも無いこの場所は、近隣の人が良く訪れる憩いの場。
ここには桜の木が何本もあり、この季節では人で賑わう。
小さな観光名所。

今日も子供連れの家族が多い。

そんな中俺は何もすることなく、とりあえず傍にあったベンチへ座った。
ボーっと景色を眺めていたら、近づいてくる気配。

「あー、カップ麺の人」
「・・・・」
「なんですか、その表情は!」

気配の正体は、コンビニで出会った青年。
手をヒラヒラと振りこっちへ寄ってきた。

「・・・属性ドッペル」
「へ、なんですか?」
「いや、なんでもない」

小春日和が似合う日曜の午前。
午前といっても、そろそろ小腹がすいてきたころ。昼といってもいいくらいの時間だ。
そんな時に、男二人が公園のベンチに座っている。
少々変な光景である。

「カップさんは何してたんすか?」
「・・・散歩」
先から呼ばれている名称が気になるが、あえて黙っておく。

「カップさん、最近コンビニきてくれないから、寂しかったんですよ!」
「はぁ」
「いつでも来てくださいね!」
「・・・」

意図的に避けていたとは言えず、そして罪悪感からか小さく頷いてしまった。
目の前の男は、やった、と嬉しそうに笑う。
しまった、これじゃ行かなくてはならない。

「これだから、やりにくい・・・」
「何がですかー?」
「気にしないで」
「?うぃっす」

そう言って、コンビニの男は正面を向く。小さな子供が楽しそうに遊具であそんでいる。
二人で無言のまま、ヒラヒラと桜が舞い落ちるのを眺めた。

「その服・・・」
「あ、駅前の蕎麦屋の制服です。配達帰りにここを見つけて寄ったんですよ」
「バイト?」
「そうっす、バイトですよ」
「・・・何個バイトしているんだ?」
んーっと、と男は悩みながら、指を折り数え始める。

「5?」
「5ッ?!」
「まぁ、でも、朝だけとか、夜だけとか、曜日が決まってたり・・・」
「でも、多いだろ。疲れないのか?」
「若いっすから。あ、これでも最高二桁いったことありますよ?夏とか」

思わずため息が出た。
パッと見、彼は高校生にも見えないが、多分大学生。
自分とあまり変わらないのに・・・・

「どうして、そんなに?」
「・・・」

彼は黙った。
しまった、言いたくないことだったのか・・・・。

彼はいつもの笑みを顔にだしながら、両手で作った拳を口元に、肘を膝につけて前かがみになった。
視線は子供・・・・いや、舞い落ちる桃色。

「もし、会いたくても会えない人がいたらどうします?」

突然の質問。
視線は動かない。

「それは、メールや電話でもダメなのか?」
「えぇ」
「手紙も?」
「そうっすね」

「会えなきゃ、意味ないんです」

どこかで聞いたことがあるような内容。
あれは自分の我侭だった。
姿が見たい、会いたい。でも、本物限定。自分勝手な思い。

あのあと彼女から聞いた言葉。
『和泉さんと話したくなったり、顔を見たくなったら、『会いに来ます』ね。』

あれはいろんな意味で大変だった。

俺の答えは

「俺も『会いに行く』」


自然と口からこぼれた。
男は驚いたのか、俺をまじまじとみつめる。
そして、クッっと笑った。

「『俺も』ってなんですか」
「・・・・」
「うん、よかった」
「何が」
「ちょっと、挫けそうになってたんで」
「?」
「気にしないでください。俺が一人で喜んでるんです」
「・・・はぁ」

彼は先ほどと違った笑みを浮かべている。
なんとなく、こっちが本当なんだろうと思った。


「俺、会いたい人がいるんです。」

流れる桃色を見つめている。

「でも、何処にいて、何をしているかわからないんですよね」

自分への笑い。

「だから、金集めてるんですよ」


いつでも飛び出せれるように。

真剣な黒い瞳。
彼の顔は、覚悟を決めた顔。

だが、一瞬にして崩れ
「あ、やべ。時間!」
といって、彼は乗ってきた自転車にまたがる。
「では、また!」

颯爽と消えていく。


「・・・嵐のような人間だな」

残された俺はただ、呆然としているだけだった。

ふと、浮かぶ物語。

「っと、きた」


俺も家へ向かった。
次に書く本は、彼への声援をこめたものにしよう、と胸に秘めて。

++++


桜が舞う。

また、花が咲いて枯れてしまっても、
俺は君を待つよ。

でも

いつまでも焦らすなら、覚悟しとけよ?
俺から会いにいくから。
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