本の虫と文字の虫とその周辺 (初めての方はカテゴリより、「はじめに」と「登場人物紹介」から)
彼は不器用だったので、
あー、死にそうだ。
恥ずかしい。
あんまり傍に寄るな。
接触もほどほどにしてくれ。
そこらで勘弁してください。頼むから。
そんな心情が彼の中をぐるぐる駆け巡る。
そんな彼の背中に彼女はぴったりとくっついて楽しそうに話をしている。
会話の内容は半分も彼の中に入っていなかった。
未だ彼は駆け巡っている途中で。
もうどっか行ってくれよ本当に。
そう思ったところで即座に反応した頭が「でもいなくなったほんとは困るだろ」と容易く正解を出した。
ピンポン。
今、脳細胞百万個は死なされた。恥ずかしすぎて。
ちらりと後ろの彼女の様子を伺う。何が嬉しいのか今日も上機嫌で自分の後ろにいる。ほんとに何が嬉しくて?知りたい理由は知的好奇心以上の何か。
だけど、
笑う顔が好きだというのに果たして理由なんてあるだろうか。
初歩的すぎて彼はそれすら見抜けずに。
疑問は今日もそこに横たわり、複雑な心情がまた彼を駆け巡る。
今日も堂々巡りを繰り返してとりあえず彼は、後ろに彼女がいることに安心していることだけ、素直に認めておいた。
そう。
彼は。
少し後ろを見やれば彼女がいるという事実を、誰にも譲る気がなかった。
「好きな女性のタイプは」
「………人の書いた本を声に出して読まない人」
「えー」
背中の温度。
賑やかな後ろ。
溶けていくような日々で、笑っているのはきっときみだけじゃなくて。
彼は不器用だったので、
(心内だけで愛でていました。)
恥ずかしい。
あんまり傍に寄るな。
接触もほどほどにしてくれ。
そこらで勘弁してください。頼むから。
そんな心情が彼の中をぐるぐる駆け巡る。
そんな彼の背中に彼女はぴったりとくっついて楽しそうに話をしている。
会話の内容は半分も彼の中に入っていなかった。
未だ彼は駆け巡っている途中で。
もうどっか行ってくれよ本当に。
そう思ったところで即座に反応した頭が「でもいなくなったほんとは困るだろ」と容易く正解を出した。
ピンポン。
今、脳細胞百万個は死なされた。恥ずかしすぎて。
ちらりと後ろの彼女の様子を伺う。何が嬉しいのか今日も上機嫌で自分の後ろにいる。ほんとに何が嬉しくて?知りたい理由は知的好奇心以上の何か。
だけど、
笑う顔が好きだというのに果たして理由なんてあるだろうか。
初歩的すぎて彼はそれすら見抜けずに。
疑問は今日もそこに横たわり、複雑な心情がまた彼を駆け巡る。
今日も堂々巡りを繰り返してとりあえず彼は、後ろに彼女がいることに安心していることだけ、素直に認めておいた。
そう。
彼は。
少し後ろを見やれば彼女がいるという事実を、誰にも譲る気がなかった。
「好きな女性のタイプは」
「………人の書いた本を声に出して読まない人」
「えー」
背中の温度。
賑やかな後ろ。
溶けていくような日々で、笑っているのはきっときみだけじゃなくて。
彼は不器用だったので、
(心内だけで愛でていました。)
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