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本の虫と文字の虫とその周辺                                                            (初めての方はカテゴリより、「はじめに」と「登場人物紹介」から)
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自分の力だけじゃ紐解けない秘密もあるでしょ。

でも答えは自分自身が持っているの。


            誘発スイッチ

次回作の打ち合わせに美作さんがやってきた。
自分はいたら邪魔かなとも思ったけど、なんだか帰りたくなかったので、




「大人しくしてますから、」
「別にいいよ。いても」
「………じゃあ、お言葉に甘えて」




そういう風に許されることって、あんまりなかったと思う。




「じゃあ私、お茶淹れてきますね!」
「いや俺淹れてくるよ」
「え、でも」
「せっかく編集者がいるんだから話聞いたら?ないでしょそんな機会」
「………」




そうは言われましても。




状況を回避できぬまま、和泉さんを抜きに美作さんと向かい合うリビング。



「………」



居心地の悪さに黙っていた。

この人は油断ならないのだ。
不敵な笑顔の下に何を隠しているのかわからない。



警戒心から目を離せずにいたら、
ふいに美作さんは視線を上げて、綺麗に笑って、









「彼が好きなの?」











直球に聞いてきた。

絶えず美しく笑うので何を言われたかわからず、呆けてしまった。




「………え?」
「だっていつ来てもいるから」
「……あー」
「どうなの?」
「うー………」
「まぁ、言わなくてもいいけど」









口に出来ない理由は、よくわからない。
きっともうばれていると知っていて、なのにうまく言葉にできない。

できないなぁ。










「……否定は、しませんけど」
「けど?」
「手ごわいですから」
「あぁ確かに。……でもあなた可愛いじゃない。魅力あるわよ。
きっと彼もギュッとしたくなるわ」
「逆ですよ」
「……逆?」
「私が、和泉さんをギュッとしたくなる」
「………………あ、そう」








好きというよりかは「ギュッとしたい」

今はその程度の認識でもいいと思う。

はっきりさせてしまったら、もう、落ちるしかないと思うから。






だからこの時は、考えないようにしたのだ。
















「ギュッとしたい」の始まりに、何があるのかなんて。









誘発スイッチ

「(ギュッとしたい?)」

自分の名前が聞こえてしまったがためにリビングに入れないでいたら、
そんなまさかの彼女の本音。

赤くなる和泉。

その場にしゃがみこんで頭を抱えてしまう。




(俺って一体、)




(彼女の何)
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