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ただ毎日に色を塗りたくるように。


カメレオン

ごめん無駄に長くなった(・∀・;)

あの「ギュッとしたい」宣言は、あんに「好き」だと明かされるよりも私にはずっと真剣に思えた。そもそも女子高生があんな目をするものなのかしら。慈愛とか、そういう類を孕んだ目をするものなの?その視線は、あなたいくつよ。と、問いたくなる。

結局それ以上を聞くことはなかったけど。
だって当人が立ち聞きしていたものだから、そこで本音を一から十まで聞くなんて酷な話でしょうし。必死で何食わぬ顔をつくって(耳だけ真赤なのがどうにもだけど)戻ってきた努力は認めるべき。

だから今後に期待することにしていた。

主に、彼女に。

なのに、




「今日はいないのね」
「なにがですか」
「彼女よ」
「あぁ」
「わかってるくせに」
「………」




彼は少し、眉間にシワを寄せた。
呆れた。つい溜め息をついてしまう。




彼にはあまり期待できない。
彼の不器用加減も鈍感さも熟知しているから。なんて、そんなこというと彼女に妬かれてしまいそうだけど。
(それも面白いかもしれないけど。)

例えば物語の登場人物なら、彼は大衆が舌を巻くほど上手に、その感情を掴むのに。どうして現実の彼女の心中は捉えられないんだろう。
不思議。すごく不思議。
でもこの不思議がなければ、逆に二人は成り立たないのかもしれない。
かといって取り立てて彼の至らなさを肯定するつもりはさらさらだけど。




「聞いてたんでしょ?」
「何を、」
「それもわかってるくせに」




今度は首を傾げた。ほ、ほんとにわからないらしい。




「っ、立ち聞きしてたでしょ!」
「!」




今度は耳まで真っ赤になった。わ、わかりやすすぎる…!
正直こっちが疲れる。なんなのこの通じなさは!

額に手を当てまた、溜め息をついてしまった。
彼のほうを見ると何食わぬ顔をつくろうと努力している、が、よほど恥ずかしいのかうまくできず変な顔になってしまっている。ほんとにもう。




「あなたはどうなのよ」
「………美作さんには関係ないでしょ」
「まぁ、ね。でも気になるじゃない。編集担当者だって楽しみがほしいのよ」
「楽しまれても」
「あの子可愛いし、私はお似合いだと思うけど」
「いや、彼女は、なんでもないですから」
「でもいつもここにいるわよね」
「………なんでもないですから」




「男って馬鹿よねぇ」




彼は目に見えてむっとした。だけど赤面した後では何の威厳もなかった。



あの子ほど心許してる人なんかいないくせに、と茶化したっていい。
本当だからだ。

肯定はしなだろうと知っていて、あえて畳みかける。ほんと意地悪のつもりだった。




「彼女、良い子よね」
「………」
「明るくて、素直で」
「……まぁ」
「目が離せないかんじで」
「それは、わかります」
「…………まぁ」




意外だった。それになんて顔してるの。




「目を離したら見逃すくらい、表情変わりますから」




意地悪だったのに、カウンターで返された。


「(うわぁ)」


眼鏡の奥で視線が丸くなる。それもまたあからさますぎる。
さっきまで変な顔だったくせに、そんな顔したら格好よく見えたりするでしょ。なんなのよもう。私は何を引き出してしまったの。


彼女のことを思って目は優しくなるわけでしょ?そんな!見てるこっちが恥ずかしい。ほんとやめてよ。なんでそんなこっぱずかしいことが素面でできるの。若いから?若いからか!
そんなところで若さアピールとか、要りませんから。

なんでそんなに、愚直で単純な恋愛ができるの。



正直羨ましい。









「………あーあ」
「ん?」
「丹波くんがもうちょっと、鈍感じゃなかったら、私惚れてたかもしれないなぁ」
「それは遠慮したいです」
「私も遠慮したいわ」




彼女と張り合うなんてごめんだ。と思ったところで、今度は彼女のあの視線を思い出す。あのときはただただその大人びた、柔らかい視線に驚いただけだったけど、



「あぁ」



あぁなんだ。一緒か。

妙に大人びた彼女の視線は、彼のそれと一緒だった。
2人そろって恥ずかしい。
大人をなんだと思ってるの、他でやってちょうだいよ。



まぁ、なんと言いますか、















「…………女もたいがい馬鹿よねぇ」



カメレオン


(視線で愛を語られても。)

(主義も主張も何もありはしない。
色とりどり想いが零れてぜんぶ飲み込んでしまうから。)
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