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あなたの声が聞きたい。

あなたと話ていたい。

もっともっと、

もっと?


【ケイタイデンワ】

「駄目だったの?」
「うん。『教えたくない』って」
「へぇ」
「・・・迷惑だったのかな」

上総にとって予想外の言葉だったようで、なにやら試行錯誤の様子。
あたしは他人にメアドを教えるという行為はあまりしたことはないが(したくもない)聞かれたらしてしまうのが人の心理。
よほど、『和泉さん』は上総に教えたくなかったのか・・・。

「美濃はずっと話していたいって人いる?」
「ずっと話していたい人?」
「うん。あのね、私は和泉さんといつまでも話したいんだ」

えへへと笑いながら答えた。

「でも、和泉さんは違うかったみたい」

切なそうな顔。
あたしはこんな上総は好きじゃない。

『和泉さん』はどうして教えなかったのだろう。
上総の話す『和泉さん』との生活から考えたら、『和泉さん』はそんなことするのだろうか?

いつでも話がしたいから。



「『和泉さん』が教えたくない理由は何?」
「・・・さぁ?聞いてないから、わかんないや」
「電話だったらいいんじゃない?」
「んー、『電話もいやだ』って言われた」
「電話も?」
「うん。電話も」

メールも電話も嫌って・・・どうしてなのかしら。
ずっと話をしていたい。
いつでも声が聞きたい。
そう思うのが“普通”なのだろうけど・・・

ふと、正面を見ると上総はあたしを見つめた。
意思の強い目。上総の目。


「だから、会いに行く」


上総は瞳をキラキラして、はっきり答えた。


「和泉さんと話したくなったり、顔を見たくなったら、もう『会いに行く』の。その時に、和泉さんが困るほど触ったりしてやるんだから!」


キラキラの上総。




あぁ、だから『和泉さん』は嫌だったのか。





「あたし『和泉さん』がメールと電話嫌がる理由わかったかも」
「えっ、ほんと?!和泉さんが単に携帯使えないとかじゃなくて!?」
「現役大学生がそんなわけないでしょ」
「そ、そうだよね!じゃ・・・なんでだろう」

もんもんと悩む上総。
もう弁当への箸の動きは止まっている。

最近いろんな上総を見る。
それもこれも、みんな『和泉さん』に出会ってから。

「聞いてみたらいいよ」

これは『和泉さん』への意地悪。

「え!・・・・・・んー、わかった。聞いてみる!」

にっこりとあたしへ笑う上総。
うん。あたしの好きな上総だ。

ちょうど鳴った昼休み終了のチャイム。
あわてて上総はソーセージを口にほりこんだ。

『和泉さん』も慌てるといい。

あたしは、心のなかでそう思った。
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