本の虫と文字の虫とその周辺 (初めての方はカテゴリより、「はじめに」と「登場人物紹介」から)
雨音が響く。
耳を塞いでも聞こえてくる。
目を塞いでもでも見えてくる。
あぁ、忌々しい。
少々シリアス。和泉さんの過去がチラリ。←
戦場のピアニストをBGMにするんじゃなかった!!(汗)
耳を塞いでも聞こえてくる。
目を塞いでもでも見えてくる。
あぁ、忌々しい。
雨音を叩く
少々シリアス。和泉さんの過去がチラリ。←
戦場のピアニストをBGMにするんじゃなかった!!(汗)
雨が降る。
雨水が窓を叩きつける。
昨日の夜から振り続けるこの雨。
TVのアナウンサー曰く、当分やみそうもないらしい。
部屋から見える空は灰色。
太陽なんか見えない。
雲が世界を覆う。
いや曇っているのかもわからない。
それぐらい一面を覆う灰と黒の世界。
俺は書きかけの原稿を投げ出し、畳の上に横になった。
手を目の上に乗せる。
視界を閉ざしたら明瞭に聞こえる雨音。
聴覚の世界を支配し始める。
今になっても引き起こされる記憶。
あの時もそうだ。
自分の中を占領したのは、自分の心臓の脈動。
そして、叩きつける雨音。
わかっていた。
人間には時間が限られていることぐらい。
だが、
理解はできていなかった。
もっと、早く気づければと思う。
早く、もっと早く。
もっと多くのことを教えてほしかった。
もっと多くのことを返したかった。
事が終わってからの悔い。
これが、
後悔。
握った手は冷たくて、しわが増えていて・・・・小さかった。
俺は、
あの人の手を握るのが怖かった。
「寝ているんですか?和泉さん」
「っ!」
いきなりの声に覚醒する。
俺は体を起こした。
「わ、なんだ。起きてたんですね」
「なんで・・・?」
「?いつもどおり学校の帰りに寄ったんですよ」
そうか、この時間は学校が終わるころ。
彼女が俺の家に来る時間。
雨音がかすかに聞こえる。
「・・・雨降っているだろ」
「そんなの関係ないです!ささ、本読ませてください!」
さぁ!と両手を俺の前に広げる。
自分で探しに行けばいいのに、何故か彼女は俺に選ばせる。
急に遠のく音。
何故?
心当たりとしては、目の前の存在。
ずっと見ていたからか、それとも俺が動かなかったからか、彼女は小首をかしげて俺を見た。
「ん、和泉さん?寝ぼけてるんですか?」
「そうかもしれない」
「え!」
俺は彼女の広げた腕を引き、肩に頭を乗せた。
近くに感じる音。体温。香り。
一定のリズムが鼓膜を刺激する。
あの大嫌いな音はもう聞こえない。
あぁ、いつの間にこんなに彼女の存在が大きくなっていたんだろう。
「このまま」
急に襲い掛かる睡魔に俺は抵抗せず、眠りに落ちた。
もう、あの音は聞こえない。
+++
おまけ
『このまま』
いきなりの大胆なセリフと行動に私は動けずにいた。
まだ私に寄りかかる彼からは、寝息が聞こえる。
首筋に彼の無造作な髪があたってくすぐったい。
今日の彼の行動はいつもの彼らしくはなかった。
どうしてだろう。もしかしたら、昨日は寝てないのかもしれない。
机の上の原稿には苦戦した跡がのこっている。
「い、和泉さん」
「足、しびれてきました」
正座するんじゃなかった。
も、もったいない!!憧れの背中が目の前だと言うのに!
いつもの彼がみたらどんな反応するだろう。
あと10分だけ待ってみることにした。
PR
Comment
コメントの修正にはpasswordが必要です。任意の英数字を入力して下さい。
最新記事
(08/05)
(02/16)
(01/24)
(10/20)
(08/27)
カウンター
ブログ内検索
アクセス解析